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孫への教育資金贈与は最高の投資

 教育資金の一括贈与の非課税措置を活用して、多くの方が節税を図りながらお孫さん等に教育資金贈与をされています。上手く活用すれば、相続税は下げられるし、お孫さんの教育資金を応援することで、子供さんの家計を助けることになりますし、この資金でお孫さんが優れた教育を受けて、成長することに投資するわけですから、これほど良い投資はありません。
 とはいえ「銀行から勧められるけど、本当に大丈夫なの?その都度贈与した方が良いって聞いたことあるけどどうなの?」と不安を感じておられるのもわかります。なにせ1500万円ですから大金ですし、せっかくお孫さんに贈与しても、上手く活かせなかったってことがあっても困りますからね。
 このブログをお読みいただければ、教育資金の一括贈与制度だけでなく、教育資金の贈与についての数種類の手法を知ることができ、最もご自身とお孫さんに向いている教育資金の贈与方法を選択できるようになります。


1.教育資金一括贈与ってどんな制度?

 孫やひ孫等を受贈者(※1)として、その教育資金等に充てるために、受贈者の祖父母等の贈与者(※2)から金銭を贈与する場合、受贈者お一人最大1500万円(習い事などは最大500万円)まで、金融機関で一定の手続きをすれば、贈与税は非課税となる制度です。(以下本稿では「一括贈与」とします)

(※1)受贈者の要件 贈与者の直系卑属(子、孫、ひ孫等)で30歳未満の者
(※2)贈与者の要件 受贈者の直系尊属(父母、祖父母、曾祖父母等) 

1.令和5年4月1日以降の一括贈与は期限延長されるも課税強化へ

この制度は期限が決まっている制度(時限立法)ですが、今までに数回延長されてきました。今回も令和8年3月末まで延長されることになりました。この制度ができた当初は、一括贈与で贈与したお金は、贈与者が贈与した後直ぐに亡くなっても、相続財産に加算されることがなかったので、資産家の相続直前対策として、活用されていたのですが、平成31年4月1日以降の一括贈与から、相続開始前3年以内の贈与については、教育資金のうち使い残しの部分(管理残額といいます。)を、受贈者が相続により取得したものとして、相続税を課税すると改正されました。 
 さらに令和3年4月1日以降の贈与から、贈与時期に関係なく、使い残し分については、受贈者が相続により取得したものとして、相続税を課税することになりました。相続発生時、受贈者が下記①~③のいずれかに該当すれば、相続税の課税対象とはならなかったのですが、令和5年度の改正により、贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円を超えるときは相続税を課税することになりました。

使い残し分が相続税の課税対象とならないケースは、令和5年4月1日以降の贈与から、
贈与者の死亡に係る相続税の課税価格の合計額が5億円以下、かつ、
①年齢が23歳未満
②在学中である場合
③教育訓練給付金の支給対象教育訓練を受講中である場合
のいずれかに該当する場合と、以前よりも限定されています。

2.相続人でない孫やひ孫の場合は2割加算

 令和3年4月1日以降の教育資金の一括贈与について、贈与者の相続発生時の管理残額(使い残し)について、贈与者の子以外の直系卑属(孫・ひ孫等)に相続税が課税される場合には、その管理残額に対応する相続税額は通常の相続税額の2割増しとすることとなりました。
 これは令和3年3月31日までの教育資金の一括贈与の管理残額に対して相続税が課せられる場合は、通常の相続税のみでしたので、さらに厳しい改正となっております。

3.教育資金の範囲は?

教育資金の対象については次の通りです。
①学校等への支払い
日本の学校・海外の学校へ支払う授業料・指導料・滞在費・渡航費
学用品の購入費・修学旅行費・給食費等

②学校等以外への教育資金等の支払い(500万円を限度)
塾・習い事・スポーツ又は文化芸術の指導対価
上記指導で使用する物品の購入費用・通学定期代・留学仲介業者へ支払う留学渡航費用

③教育関係以外の支払い(対象外)
海外の学校等に通わないホームステイ等の滞在費
学校等以外でスポーツ・芸術を習うため仲介業者等へ支払う海外渡航費

2.教育資金一括贈与の税効果検証

それでは、事例でどれほど相続税対策効果があるか検証してみましょう。

(事例)
・所有純財産の相続税評価額合計5億
・法定相続人  配偶者 子2人
 (法定相続分にて相続)
・孫2人(小学生)へお一人1500万円の教育資金贈与を行った場合
 (ただし、1500万円はすべて使い切るものとします)

①現状の相続税

(ご本人の相続時の相続税)
課税遺産額=相続財産5億円―基礎控除4800万円=4億5200万円
相続税の総額=1億3110万円
一次相続時相続税額=6555万円(配偶者税額軽減後)A

(配偶者の相続時の相続税)
課税遺産額=相続財産2.5億円―基礎控除4200万円=2億800万円
二次相続時相続税額=4920万円 B
現状の相続税=A+B=1億1475万円

②お孫さん2人へお一人1500万円教育資金贈与をした場合

(ご本人の相続時の相続税)
課税遺産額=相続財産5億円−1500万円×2人―基礎控除4800万円=4億2200万円
相続税の総額=1億1835万円
一次相続時相続税額=5917.5万円(配偶者税額軽減後) A

(配偶者の相続時の相続税)
課税遺産額=相続財産2.35億円―基礎控除4200万円=1億9300万円
二次相続時相続税額=4390万円 B
贈与後の相続税=A+B=1億307.5万円(△1167.5万円効果)

 相続税が1000万円以上下がって、お孫さんの将来の為に十分な教育資金が確保されますので、相続対策としては大変有効です。お孫様は在学中にやってみたい習い事や留学、授業料は高くても質のいい教育を提供する学校へ進学することで、1500万円すべて使い切っていただければ、贈与者の相続がいつ発生しても相続税の課税対象となる管理残高はなくなります。

3.教育資金一括贈与のデメリット

 今まで教育資金の一括贈与のメリットをお伝えしてきたのですが、デメリットや注意点についても触れておきたいと思います。

  1. 全体財産の中で預貯金が少ない場合などはご自身の老後資金に負担を生じます。

  2. 一旦教育資金贈与として拠出した資金は、一定の用途以外に引き出すことはできません。孫に車を買ってあげたいと思っても、教育資金ではないので別途贈与してあげる必要があります。

  3. お孫さんが想定通りの進学をされずに、別の人生を選択されたことで、使い残しが出た場合は、お孫さんが30歳になるまでに相続が発生すれば、相続税の課税対象(2割加算の対象)となり、ご存命中にお孫さんが30歳になられた場合は贈与税の課税対象となります。

  4. 贈与された教育資金を引き出すために、教育機関の領収書が必要ですので手続きが面倒です。

  5. そもそも相続税がかからない方や相続税が少額しかかからない方は、一括贈与をしても相続税対策効果はほとんどなく、教育資金についても必要な都度贈与する方法と比べて、お孫さんがお金を引き出すのに煩雑な手続きをしなければなりません。

  6. 特定のお孫さんだけに一括贈与すれば、子供の兄弟仲が悪くなる場合があります。教育資金の一括贈与だけではなく、贈与を絡めた相続対策をされる場合には、事前に家族で話し合い、一括贈与の対象でないお孫さんも別の方法で贈与されるなど、相続人となる方全員の納得をいただいたうえで、すすめられることをお薦めします。

4.一括贈与以外の教育資金贈与方法

お孫さんに教育資金を贈与する方法として、一括贈与以外の方法として次の2つが考えられます。

①非課税贈与
 夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるものは贈与税の非課税です。
 そして、ここでいう扶養義務者とは、「配偶者並びに民法の規定による直系血族及び兄弟姉妹並びに家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となった三親等内の親族、これらの者のほか三親等内の親族で生計を一にする者については、家庭裁判所の審判がない場合であってもこれに該当するものとして取り扱うものとする。」となっていますので、祖父母が孫に教育費を贈与する場合で必要な都度必要な金額については贈与税がかかりません。

②暦年課税贈与
 年間110万円を超える贈与をされると贈与税がかかりますが、110万円以内なら税金はかかりません。贈与されたお金の使途は自由です。勿論110万円を超える場合は贈与税の申告と納税をお忘れなく。
 この制度は教育資金の一括贈与と併用ができますので、用途に応じて使い分けられると良いでしょう。

5.一括贈与・暦年贈与・非課税贈与の使い分け

①一括贈与が有利な場合
 相続税が高額に係る方で、老後資金が潤沢にあり、贈与対象者であるお孫さんやひ孫さんの年齢が小学生等比較的若い方である場合に、受贈者が在学中に使い切れる範囲の金額を贈与しておけば、相続時期がいつであっても、教育資金を予定通り使い切ってもらえば、使い残しに対する相続税の課税を心配する必要はありません。
 まずは最低限の教育費だけでも一括贈与しておきましょう。

②非課税贈与が有利な場合
 相続税がかからない又は少額しかかからないと予想される場合や受贈者が大学生であるなど、在学期間が短いと予想される場合に授業料などの教育費を負担する場合は、一括贈与より非課税贈与の方が、手続きが面倒でないので、便利です。大学などへ直接振り込まれるなど、必要な金額だけ負担することがポイントです。

③暦年課税が有利な場合
 教育資金や生活費とは言えないが、お孫さんのために援助してあげたいときに使います。例えば、「お孫さんが免許を取ったので新車の頭金を出してあげたい」とか「習っていたバイオリンが上達してきたので、良いバイオリンを買ってあげたい」とか「株式投資の勉強のために100万円を元手としてあげたい」場合などは、暦年贈与を使って資金を渡してあげることができます。

6.まとめ

 教育資金の一括贈与は上手く活用されれば、お孫さんやひ孫さんの成長機会を与えてあげることが出来て、なおかつ相続対策にもなるという非常に有利なお金の使い方です。ただし、こんなに大金を贈与して、孫を甘やかしてしまうと、逆に為にならないのでは?というご意見も確かにあります。しかし資金の使途は主に教育機関への支払いに限定されていますので、無駄遣いはしにくい制度となっています。資金贈与を受けた恵まれた子供たちが、将来社会を良くしてくれることを期待したいですね。

一度お問い合わせください。
あなたとお孫さんにとって最適な贈与方法をご提案します。

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