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相続を弁護士に依頼する前に

 相続で争いとなった場合、直接相続人同士で話し合うと、相続とは関係のない過去の出来事や、不用意な発言が相手を傷つけ、遺産分割協議がただの喧嘩になってしまうこともあります。これを避けるには双方弁護士に代理を依頼することも、一つの方法です。ただし、弁護士はそれぞれの相続人の代理人ですので、直接言い合いにはならないものの、調停や審判の間は文書で双方の言いたいことを提出し、お互いがその内容を読んでは、気分を害するということになりがちで、結局相続人同士は絶縁状態となってしまうケースが多いように思います。今回は弁護士に依頼する前に知っておくべきことや試してみるべきことをまとめました。これから遺産分割協議を始める方にご参考としていただけますようお願い申し上げます。

1.弁護士に依頼する費用は?

 現在は、弁護士費用は自由化されていますので、依頼される弁護士事務所によってマチマチですが、昔は弁護士報酬規程(旧)があったため、同じ基準で報酬が決定されていた時期があります。そして現在もこの規定をベースに弁護士報酬を決めている事務所も多いですので、ご参考までに以下に掲載いたします。

 遺産分割での経済的利益とは依頼者が相続する遺産の時価相当額です。ただし「分割の対象となる財産の範囲および相続分について争いのない部分」については、その時価相当額の3分の1の額となります。弁護士に依頼して訴訟で取得する財産が5,000万円の場合(財産の範囲及び相続分について争いのない場合と仮定)を例に単純計算してみると着手金(5,000万円×1/3×5%+9万円)+税=約101万円となり、さらに報酬金は(5,000万円×1/3×10%+18万円)+税=約203万円となり、さらに実費が加わりますのでかなりの費用となります。もちろん現在は弁護士報酬は自由化されていますので、弁護士事務所毎に報酬額は異なると思います。日本弁護士連合会が会員弁護士に対して行ったアンケートによれば、上記の条件で着手金50万円と答えた弁護士が41%、30万円と答えた弁護士が31%、報酬額が100万円と答えた弁護士が31%、180万円が15%ということでした。事案によって複雑な場合は、当然これらより高額の報酬がかかるのではないかと思われますので、ご依頼になる前に確認しておく必要がありそうですね。

2.弁護士へ依頼した場合の違いは?

 弁護士へ依頼した場合は、調停や審判を弁護士が代わりにやってくれますので、費用はかかっても、前述の直接相手方と交渉することによる精神的な負担がないという面もありますが、それ以外の違いというと、財産評価です。遺産分割協議においては相続税評価を時価として相続人同士の協議がされる場合が多いのですが、弁護士へ依頼した場合は時価ベースの財産評価となりますので、特に実勢時価と相続税評価の乖離の大きい財産(例えばタワーマンション等)がある場合は、実勢時価に再計算されることによる影響が大きいと思います。また、相続人だけの分割協議ではあまり話題に上がらない生前贈与財産について、弁護士へ依頼すれば、「生計の資本としてされた生前贈与」や「婚姻や養子のための贈与」については、特別受益として相続財産に合算されたうえで、その取得者の具体的相続分から控除しますので、生前に贈与された財産の多い相続人の方はその分既に財産分けを受けているものとしてカウントされるため、手取りの財産は思ったよりも少なくなるかもしれません。要するにプロの法律家が法律の規定通り分割協議をすすめますので、一般の人が気づかない点にも配慮されるため、思っているのと違う結果となる場合があるということです。

3.弁護士に依頼した方が良い場合

 相手方が弁護士を立てて交渉してきた場合や家庭裁判所に調停を申し出た場合は、こちらも弁護士に依頼したほうが良いでしょう。なぜなら、知識の差が結果の差となってしまう可能性があるからです。また分割協議以前に、「遺言書の有効性」「遺産の範囲」「相続人の範囲」などに争いがある場合は家庭裁判所の審判ではなく、裁判所での通常訴訟となりますので、このようなケースでは弁護士に依頼したほうが良いでしょう。

4.弁護士による解決の前に

 相手方はほとんどの場合他人ではなく、以前から良く知っている血縁者同士ですから、誤解を生まないように慎重に話し合えば、調停や審判に発展する前に決着がつく場合がほとんどです。当センターで受託した相続では、お話合いのベースとなる財産明細とお話合いいただける場を提供しております。お互いの主張を聞いて、譲り合えば多額の弁護士費用も負担することもなく、家族が絶縁状態になることもありません。まずは家族同士でお話合いをするべきでしょう。税理士は弁護士の代わりはできませんので、相続人に成り代わって相手方と交渉することはできないですが、交渉の場に同席することで、お互いへの不用意な発言は抑えられ、冷静にお話合いができる場を提供することができると考えております。

5.まとめ

 今回ご覧いただいたように、家庭裁判所での紛争解決は弁護士費用が高額で、調停や審判をして決着がついても、相続人の心の中にはわだかまりが残り、今まで通りのお付き合いができなくなります。もちろん、相手方があまりにも自己中心的である場合や法律を逸脱した考えを押し付けてくるタイプの場合は、法律による解決も一つの方法です。しかし、少しでも話合いによる解決の可能性があるのならば、できるだけ分割協議で解決すべきでしょう。当センターでは円滑な分割協議の場の提供に重点を置いて相続のお手伝いをしており、ほとんどのお客様が家庭裁判所の調停や審判を利用することなく相続問題を解決されています。

お問い合わせはこちらへ。

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